コラム

第49回 「混合診療」

最終更新をしてからはや半年以上がたってしまいました。クリニックでは、今年電子カルテを導入することにし、機種選定、導入、使い方の講習など瞬く間に時間が経ってしまい、コラムの更新まで手が回りませんでした。導入して2ヶ月がたちますが、いまだにコンピューターのご機嫌を伺っている状態で、毎日汗だくになって取り組んでいます。もう少し余裕ができれば、患者さんと笑い話でもできるのですが、今の私は患者さんから見ると顔をこわばらせてモニターをにらみつけているんだと思います。

さて、今回は今新聞で話題になっている混合診療の話を取り上げてみたいと思います。混合診療とは何でしょう?病院やクリニックに来られるほとんどの方は健康保険を使って診療を受けておられると思います。日本は国民皆保険制度が確立しており、誰でもどこでも健康保険を使って、医療を受けることができます。この健康保険を使うと、70歳未満の方で3割負担、75歳未満の方で2割あるいは1割負担、75歳以上の方なら1割負担で医療を受けることができます。しかし、これは国が認めた医療にだけ適応され、例えば外国だけで認められた抗がん剤の治療であったり、まだ効果がはっきりとしない最先端の治療は、自費診療になります。

従来から問題にされていたのは、例えば病院に入院し、保険の利かない抗がん剤の治療を受けた場合、抗がん剤が自費になるのは仕方がないとしても混合診療禁止という前提のため、入院費や検査代など本来なら保険が適応されるものまですべて自費になってしまうということでした。これは、効果のない治療を医師が勝手に保険と併用して患者さんに行わないようにすると共に、混合診療を認めてしまうと新しい有効性の高い治療も保険として認めるのが遅れてしまう、あるいは保険外ですればよいということになるのではないかという危惧があるためだと言われています。そのため混合診療は絶対反対、国民皆保険制度を守れ、という議論になってきたのです。

それが今度から、ある特定の基幹病院で(恐らく国が指定する大きな病院)患者さんからしてほしいという要望があった場合に限り混合診療を認めましょう、(患者申し出療養制度)ということが提案されています。医療サイドから勧めるようなことになると情報の少ない患者さんが不利になると考えてでしょうが、患者さんが治療方法を自ら調べてきてお願いするケースがどれだけあるのかと思うと少し疑問です。

混合診療でのメリットは、やはり混合診療を希望する方が今まで全額自費だったのが保険適応のない部分だけ自費でよいという経済的なメリットでしょう。そして、そこで培われた最新の治療が早く保険適応になるかもしれません。また、需要があると考える企業や大学が競って新しい治療を開発するかもしれません。

逆にデメリットは、保険外の診療をできるのは結局お金持ちに限られ、お金の切れ目が命の切れ目になってしまう可能性、混合診療があるのだから急いで保険診療にしなくてもいいのではないかという保険診療の質の低下、混合診療のできる病院は都会に限られるので都会と地方の医療格差が生まれる可能性、などが考えられます。

皆さんはメリット、デメリットどちらが多いと考えますか?私は、患者さんにとってデメリットのほうが多いと思います。私たちが実地で診療していて、毎年のように新しい器具を使った新しい手術法や、新しい薬を使った新しい治療法が生まれているのを目の当たりにします。それらは総じて高価でびっくりするような値段が付いています。侵襲の少ない治療になるので、患者さんにはメリットがありますが、治療費は高額になります。患者さんが健康保険で支払う一月の費用には上限があるので、それ以上は健康保険組合が払うことになりますが、年々その額は増えています。日本では、保険料を払う若者が減って医療の必要な高齢者が増えていきますから、どう考えても保険財政は悪化していきます。混合診療を言い出したのは、"お金がなくなるので、高い治療費は皆さんが自分で払ってくださいね。"ということだろうと思います。政治家は、ずるいですから、選挙のとき選挙民が困るようなことは絶対に言いませんし、しません。混合診療にしても、メリットだけをマスコミに宣伝させ、制度を導入してから、一部の人が後になってからえらいことになっているのがわかる、ということに成るのではと思います。

国民皆保険を守って、お金がなくなって健康保険制度がなくなるのがいいのか、高額な保険外医療費を自分で払ってでも健康保険制度を維持すべきなのか、究極の選択を迫られる時が来るのかも知れません。喜ぶのは、保険外の高額医療費に備えて生命保険に入る人が増えるでしょうから保険料で潤う生命保険会社だけのような気がします。

第48回 「過活動膀胱」

気が付けば、今年も残すところ1か月となりました。今年は、異常気象が続いた年で、大雨、台風、竜巻と大きな災害に驚くとともに自然と共存していく難しさを教えられた1年でもありました。

秋も深まり、気温が下がってくると泌尿器科で増えてくるのが、これまでも何回か取り上げた過活動膀胱という病気です。最近は研究も進み、病気のメカニズムも明らかになってきました。今までは、膀胱の収縮する筋肉が自分の意思でコントロールできずに収縮してしまい、膀胱の内圧が急に上がることで突然、強い尿意を感じると考えられていましたが、それだけではなく膀胱の知覚神経が敏感になるため少量の尿が溜まっただけでも尿意を感じてしまうという経路もあることがわかってきました。これまでは、筋肉の収縮の方ばかりを見ていて、そこに対する薬が開発されていましたが、今後はこの知覚神経に注目した新薬が開発されるかも知れません。

寒くなるとこの症状を訴える患者さんが多くなるというのも興味深い現象で、膀胱は体の中にあるので気温の影響は受けないはずです。しかし皮膚表面の体感温度が下がってくると尿意を感じることがあることは普段皆さんも感じるところだろうと思います。また、使い捨てカイロなどを下腹部や腰回りに張ると頻尿がましになる患者さんも多くいらっしゃいます。こういう現象を垣間見ると人間の体は本当に不思議だなといつも感じます。 さて、以前に書きましたように過活動膀胱に対してガイドラインでは抗コリン剤と言われる薬が第一選択薬として投薬されるように勧められています。しかし、有効性は高いもののある種の緑内障を持つ患者さんには使えません。また、唾液腺に作用し唾液の分泌を抑えたり、腸に作用しその動きを抑えたりするため口渇や便秘が多く、悩みの種でした。この副作用のために抗コリン剤が内服できなかったり、副作用のための薬を飲む必要があったりで我々の方も治療に大変気を使ってきました。

現在も抗コリン剤は第一選択薬として推奨されていますが、最近これらの副作用を取り除いた薬が開発されています。昨年から、ベータ3刺激剤という薬が発売され、現在我々泌尿器科医もよく処方しています。今までは、排尿筋の異常な収縮を行うアセチルコリンレセプターという受容体をブロックすることに重点が置かれ、様々な抗コリン剤が開発されてきましたが、このベータ3刺激剤は膀胱の筋肉を弛緩させる受容体(ベータ3受容体)に結合してこの受容体を刺激して膀胱の筋肉を弛緩させるという働きをしています。面白いのは、もともと膀胱に対して開発されたものではなくやせ薬として開発されたという点です。(もちろんこの薬を内服したからと言って痩せません。誤解のないように。) 作用機序が全く違うので口渇や便秘が起こらないので患者さんには喜ばれています。また、抗コリン剤でも内服するのではなく湿布薬のように皮膚に張るタイプの経皮吸収薬も開発されてきました。経口で薬を摂取するとまず腸で吸収され肝臓を通るのでここで多くの薬が代謝されてしまい、有効成分を残すためには高い濃度が必要になります。そのため高用量の薬が必要となり副作用も出やすいのですが、経皮吸収にすると肝臓を通らないので低い用量で済み、副作用が起こりにくいことを利用して開発されました。これは皆さんがよくご存知の湿布薬を売る会社が既存の抗コリン剤を使って開発し、最近発売されたのですがその効果を今注目しています。

日本の“ものつくりの力”がすごいのは“はやぶさ”や“まいど1号”などの人工衛星、H2ロケットの宇宙開発の技術のニュースやハイブリッドカー、電気自動車など自動車産業の繁栄ぶりを見てもわかりますが、前者のベータ3刺激剤も世界に先駆けて日本で初めて開発された日本の会社の薬ですし、昔からあった湿布薬の技術を使って経皮吸収薬を開発したのも日本の製薬会社です。TPP解禁を狙って外資の会社が日本の製薬市場を虎視眈々と狙っているようですが、日本の国も国の政策としては仕方がないとしても、後発品を作る会社ばかりに重点を置かず、このような独自の薬を開発する会社もぜひ応援してあげてほしいと思います。

第47回 「尿路結石」

気が付くと年が明け、桜の花も散り、暖かい日々が続くようになってきました。これで47回目のコラムなのですが、泌尿器科で最も痛い病気、尿路結石症を一度もしっかりと取り上げていないことに気が付きました。今回は、この尿路結石症について書いていきたいと思います。
結石と言っても体にできる石には色々なものがあり、原因も異なります。よく混同される胆石は、胆のうという臓器にできる石で尿路にできる石とは、原因も組成も全く異なります。胆石を持つ人が、尿路結石に罹り、“私は良く石ができるので......。”と言われるのは、冗談としては良くできていますが医学的には正しくありません。 尿路結石は、その石が存在する場所によって病名が違ってきます。腎臓に石があれば腎結石、尿管にあれば(これが一番痛む場所です。) 尿管結石、膀胱にあれば膀胱結石、滅多にありませんが尿道にあれば尿道結石という名前になります。一番多いパターンは腎臓で石ができ、尿管に落ちてくるという場合です。5mm前後の結石が尿管に動いて落ちてくるとこの世のものとは思えない痛みが襲ってきます。(と、多くの患者さんは言われます。) 吐き気を伴う腰背部痛、血尿が特徴的な症状で、超音波検査で腎臓が腫れているのを確認できれば診断は比較的容易です。腎臓が腫れるというのは、尿管というパイプに石が詰まると腎臓で作られる尿が石の場所でせき止められて腎臓で尿が溜まり、腎臓がカーンと張って痛みとなるのです。 結石ができる原因は、尿が濃くなると尿中のカルシウムとシュウ酸、リン酸が結合して結晶になったり、あるいは尿酸が多量に出てくると尿酸の結晶が析出することです。また、遺伝的な病気でシスチンという物質が尿中にたくさん出てきて結石になるというものもあります。
一般的に、7mm以下の結石は自然に出てくることが多いですが、8mm以上の結石は出てくるまでに時間がかかったり、出てこなかったりするので外科的に治療することが必要になってきます。検査で、7mm以下の石であることがわかると、痛いときには痛み止めを使いながら排石促進剤で結石が出てくるのを待ちます。カルシウムを含む結石は溶けませんが尿酸を含む結石は溶けるので尿をアルカリにする薬を飲んで溶解を促すこともあります。8mm以上の結石は皆さんが良く爆破という言葉で表現されますが、ショックウェーブという機械で体の外から衝撃波を当て結石を破砕して出易くしたり、尿管の中に細い鏡(尿管鏡) とともに石を破砕する機械を入れて石を砕いたりします。私が研修医のころは、泌尿器科で多い手術の一つが結石を取り出す開腹手術でしたが、今ではすっかり行われなくなりました。
尿路結石の予防としては、生活習慣の改善、食事療法が大事で夜遅くに帰ってきてお腹いっぱい食事をし、すぐ寝てしまうという生活をしている方、水分摂取が少なく濃いおしっこを常時している方、シュウ酸を多く含まれる食事を好んでする方、お酒、特に醸造酒(ワイン、ビール、日本酒など)を好んで飲まれる方は注意が必要です。一昔は、結石の原因の一つはカルシウムだ、結石を再発する人はカルシウムを制限しなくてはならないと言って牛乳を飲まないでくださいなんて指導していたこともありましたが、今は逆でシュウ酸が結石の悪役でこれを尿中に出さないようにするには腸管におけるシュウ酸の吸収を少なくする必要があり、そのためには牛乳などのカルシウムをたくさん取ることによって腸管内でシュウ酸カルシウムの結晶を作らせて吸収できないようにしてしまおうとしています。つまりカルシウムをしっかり取りましょうと指導しているわけです。また、尿酸も尿酸結石の原因だけでなく、すべての結石を形成する因子となります。尿酸値が高い方は注意しましょう。 これから暑くなりまた結石ができやすいシーズンとなります。普段から水分をしっかり取って尿を濃縮させないように気を付けてください。

第46回 「前立腺肥大症」

 暑かった夏も終わり、朝夕が冷え込む季節になりました。皆さん風邪などひかれていないでしょうか。今回は、泌尿器科の"基本のき"に戻って前立腺肥大症を一度取り上げてみることにしました。 前立腺は、男性にだけ存在する臓器で膀胱の直下に位置しています。精液を作ることを役割としていますが、若いころは栗の実あるいはクルミの実くらいの大きさで尿道を取り巻いています。年を取ると誰でもこの前立腺が大きくなりさまざまな症状が出てきます。これは、頭の髪が白くなるのと同じ加齢現象ですが、大きくなるスピードや程度が人それぞれで違うので症状が強く出たり、出なかったりします。前立腺は40歳代後半から大きくなり始めますが、大きくなる理由は、実はまだはっきりとはわかっていません。加齢により体内の男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることが原因であると説明されたり、大きくなるような成長因子が分泌されることが原因だと説明されたり、前立腺の腺組織(精液を作る部分)と間質(それ以外の部分)とが協調してお互いを大きくしていると説明されたりしていますが、恐らくこれらすべてのことが複雑に絡み合って大きくなっているのだろうと考えられています。前立腺が大きくなると、中を通っている尿道が圧迫されたり、引き伸ばされたりすること、下から膀胱の底部を押し上げることなどからおしっこの勢いがなくなったり、おしっこの間隔が短くなったり、おしっこを我慢するのが難しくなったります。また、おしっこを出したのにまだ残っているような気持ち悪さを感じたり、おちんちんを下着にしまった後にじわーっと尿が下着に染み出てくるというような排尿後の症状が出る方もおられます。
 治療は、薬物療法に関しては年々進化しています。今から30年前は、漢方薬や生薬などが中心でしたが、アルファブロッカーと呼ばれる尿道をリラックスさせてくれる薬が出て治療が一変しました。今まで漢方薬で効果のない方は手術を受けてもらうしか仕方がなかったのですが、この薬により症状が取れてしまう方が多くなりました。また、ここ数年でアルファブロッカーの種類も豊富になり、より使いやすくなりました。また、頻尿や切迫感といった辛い症状に特化した薬も次々に発売されるようになりました。最近では、前立腺そのものを小さくしてしまう効果の高い薬も出てきて、いろいろな薬の組み合わせで症状を取ることができ、患者さんのQOL(生活の質)は年々向上してきています。
 また、当クリニックでは、新しい薬の誕生にも一役買っており、より効果の高い、安全な新薬の試験(治験)を積極的に行っています。現在は、前立腺肥大症や夜間頻尿に悩んでおられる方のための薬の治験を行っています。これは、患者さんにご協力いただかねばならないことですが、患者さんには現行の治療では満足できない場合、世の中に先駆けて新しい薬を試していただけるメリットがあります。また、治験を依頼する製薬会社には、より効果の高く、安全な薬を同じ症状で困っておられる患者さんに早く使ってもらえるよう製品にできるというメリットがあります。我々はこの橋渡しになりたいと思っています。

第45回 「急性膀胱炎」

 桜の花が散って若葉が芽吹く季節となったと思うと竜巻が起こったり、ひょうが降ったりと天変地異を思わせる気候が続いています。ずっと途切れていたコラムも周りからせっつかれてようやく重い腰を上げた次第です。
 さて今回のテーマは膀胱炎です。女性なら一度は経験があるかもしれません。おしっこをすると排尿の最後にキューっと痛くなったり(排尿時痛)、尿が残っている感じがあったり(残尿感)、すぐにおしっこに行きたくなったりする(頻尿)、困った病気です。もちろん男性にもおこる病気ですが、男性は、解剖学的に尿道が長く膀胱炎にはかかりにくい仕組みになっています。それでも膀胱炎を起こす方は、出口にある前立腺が大きくなっておしっこが出にくくなっている、あるいは膀胱の機能が低下しておしっこを排出しにくくなっていておしっこが膀胱内に残る、など何か原因があって膀胱炎になることが多いです。一方、女性は尿道が短く、また肛門との距離が短く、原因菌が外陰部で住みやすい環境ができており、そこに生理や尿失禁など外陰部が湿潤する原因があるとさらに膀胱炎をおこしやすくなります。
 膀胱炎の治療は、抗生剤を内服することでほとんどの方はよくなります。昔はどんな抗生剤でもよく効き、3-4日内服していただくとまず治癒しましたが、最近は抗生剤の乱用により耐性菌が増加し、20人に1-2人の方が抗生剤を変更せねばならなくなりました。よくある間違った抗生剤の飲み方は、風邪などで抗生剤を内科の先生からもらい良くなったので薬を飲まないで余らせておく、膀胱炎になった時にその抗生剤をちょこっと飲む、一旦は症状が良くなるのですが、抗生剤の量が足りないためにまた症状が出てくる、あわてて泌尿器科に受診するというパターンです。細菌は、低用量の抗生剤を投与されると次第にその抗生剤に対し抵抗性を生じてきます。いわゆる耐性菌の出現です。その抗生剤だけに抵抗になるだけならまだ良いのですが、そうではなく一緒の効き方をする複数の抗生剤に対し耐性を獲得します。ですから膀胱炎になった場合、完全に原因菌をやっつけなければなりません。医師の指示通り内服しましょうと言われるのはそのためなのです。中には私は普段薬なんか飲んでないから安心だわ、と思われる方もいるかもしれません。基本的にはその通りなのですが、安心はできません。あなたの周りの誰かが抗生剤を乱用していると、その方にできた耐性菌があなたの周辺のコミュニティーに広がるからです。Aさんに付いた耐性菌が家に招かれたBさんの体に付着し、回覧板を持って行ったCさんのお宅に広がる、インフルエンザやはしかなどの伝染する病気と一緒です。膀胱炎にならない限り悪さをしませんが、ひとたび感染すると治療に難渋します。
 それでは予防はどうするのでしょう?排尿とは、体の老廃物や余った水分を外に出す手段ですが、それと同時に膀胱内を洗浄して中に侵入した細菌を追い出す働きもあります。女性は尿道が短いので少なからず膀胱内に細菌は侵入してきます。トイレに行くのが嫌だからという理由で水分摂取を極力減らしたり、おしっこを我慢したりするのは細菌を膀胱内に滞留させる原因になります。また、冷え、疲れなども体の免疫力を低下させ感染を成立させてしまいます。暖かくする、規則正しい生活をするというのはそのためなのです。また、若い女性の場合、性行為の後で膀胱炎になる方がよくおられます。性行為の前後にはシャワーを浴び清潔を保つ、(これはパートナーも同じです。) 性行為後に必ず排尿するということが重要です。それでも膀胱炎になりやすい方は、どうするか?膀胱炎の予防として効果のある漢方薬を内服して頂いたり、最近注目されているクランベリージュースを飲んで頂いたりすることで予防できることがあります。

第44回 「TPP-その2」

 大寒波が日本に到来し、寒い日が続いていますが、皆さんお変わりありませんか?年も明け、今年は震災から立ち直る年です。みんなで力を合わせて頑張りましょう。
 さて、最近報道ではTPPに関することがあまり言われなくなりましたが、昨年末からの続きで日本の医療がTPP参加でどのように変化するのか考えてみましょう。
 米国政府と米国政府を応援する米国保険業界は、恐らく日本の国民健康保険制度はTPPにおける非関税障壁だと主張し、アメリカと同じような混合診療の解禁を要求してくると思います。そうすると、どうなるでしょう?
 最先端の医療を求める人は、保険で利かない部分の医療は自費で賄い、保険で認められる部分の医療は健康保険でという風になるかもしれません。このようなお金持ちの方々は、便利になるかもしれません。しかし、健康保険組合の収支が悪い中、医学が進歩して良い治療方法が出てきても高額になる医療は健康保険医療として認められなくなるでしょう。混合診療は、一見、今までの不都合を取り除くように見えるかもしれませんが、一旦導入されると保険で認められるべき最新医療技術が、なかなか保険診療として認められなくなる可能性が高いと思います。入院費、検査費は健康保険で、手術費は自費でという時代が来るかもしれません。
 入院して、まず聞かれることは、手術が必要ですが、松竹梅とあります。松コースは、経験豊富なドクターが最新の医療器具を使い手術します。この場合100万円掛かります。竹コースは、経験は中くらいの先生が普通の道具を使って手術します。この場合50万円です。梅コースは、医者になりたての先生が、10年前の道具を使って一生懸命手術します。この場合は10万円です。どのコースになさいますか?
 要するに医療が平等ではなくなって、お金がないと良い医療を受けられなくなるという時代が来るかもしれません。そうするとそのような場合に備えてみんな民間の医療保険が必要になり、医療保険の得意な外資の保険会社が大もうけするという構図が浮かび上がってきます。野田総理は、そのようなことの無いようにがんばりますと国会で言われていますが、いったんTPPに入るとそのようなことは言っていられなくなります。外国との条約(TPP)は、国内法(国民健康保険法)に優先するからです。
 混合診療解禁が認められなければ、外資保険会社は、国民皆保険制度は、非関税障壁だと訴えて裁判を起こします。訴える先は、日本の裁判所ではなく、TPP違反を訴えるのは国際的な仲裁裁判所です。そこでは、国民皆保険制度がいかに優れた制度で日本に必要かという点で争われるのではなく、国民皆保険制度というものが、外資保険会社が日本に参入する障壁になっているかどうか、障壁となっている場合、保険会社の投資家にとって損失になっているかどうかという点にのみ争われ、負けると(恐らく負けますが)多大な賠償金を外資保険会社に支払うことになります。これは、勿論日本国に対しての損害賠償ですから税金で支払うことになります。このように、国民皆保険制度がなくなるばかりか賠償金まで支払うことになるかもしれません。そんな馬鹿なことがあるかと思われる皆さん、実はもうメキシコ、カナダで同じような事案で裁判を起こされカナダ政府、メキシコ政府は賠償金の支払いを請求されています。
 一方で、日本では使われていない新薬が積極的に使えるようになるかもしれません。欧米では5-10年前から使えていた薬も日本では新薬として審査されるスピードがあまりにも遅いため使えていなかった状況があります。TPPに参加することでこれらのスピードが一気に速くなり新しい薬が広く使えるようになる可能性があります。しかし、これらも保険で認められなくなれば、お金持ちの方のみが使える薬となるかもしれません。
 TPPは私たちに関係ない貿易の話だと思っていると、とんでもない時代が来る可能性があります。経済が弱肉強食になるのはある程度しかたがないとはいえ、本来平等であるべき命がお金のあるなしで決められる時代の到来は歓迎すべきものではないと思っています。

第43回 「TPP-その1」

 朝夕ぐっと冷え込んできて冬への季節の移り変わりを感じる今日この頃です。さて巷では、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)なるものが世の中をにぎわしていますが、今回は、このTPPが日本の医療に対しどのような影響を及ぼすか考えてみましょう。少し長いので2ヶ月に分けて書いていきたいと思います。
 TPPは、この協定に参加するすべての国における貿易の関税をなくし、経済を活発にしていきましょうという目的で作られています。現在、アメリカ、日本を始めシンガポール、ブルネイ、チリなど10カ国以上参加を表明しています。輸出を国是としている日本としては、このような大きなマーケットができると輸出産業である車(トヨタ、ホンダなど)、電機(ソニー、パナソニック、キャノンなど)など輸出製品に関連する会社は恩恵を受けますが、反面、他国に比べ生産効率が悪いとされる農業は壊滅的な被害を受けると予想されています。
 それでは、医療についてはいかがでしょう?現在予想されている影響は、混合診療についてです。混合診療とは、健康保険で認められている医療と認められていない医療を同時に行うことを言います。現在、日本では混合診療は認められていませんので、混合診療を行った場合、健康保険で認められている医療分も自費で賄わなければならず、自己で負担する医療費はかなりの高額になります。たとえば、腎臓癌にかかり、現代医学の最先端である樹状細胞による免疫療法を入院して行いたいとします。(これは、先ごろノーベル医学賞を受賞して、実はその直前に死去されていたことが話題になったスタインマン博士が開発し、自身も膵臓癌のためこの治療法を受けていたそうです。)入院、検査費は健康保険で認められますが、免疫療法自体はまだ効果の良し悪しがわからないということで健康保険では認められていません。したがってすべての医療費が自己負担となり数百万円の医療費を自分で負担する必要が出てくるのです。この混合診療禁止は、違法であり、健康保険の部分は認められるべきだと主張する患者さんの裁判が続いていましたが、先頃、最高裁判所の判決が出て、混合診療禁止は合法であるとの最終見解がなされました。
 もしTPPに日本が参加するとなると恐らく、この混合診療の問題がクローズアップしてくると思います。アメリカの保険会社は日本を大きなマーケットとして考えています。皆さんがよくテレビでみる医療保険のCMがこれです。入院すると1日3000円とか5000円など、何歳でも加入できます、など言っていますよね。なんとなく、"ああ入院するといっぱいお金がかかるなら心配だなあ。"なんて思っていませんか?この時点で皆さんはだまされているのです。日本の健康保険制度は非常に優れたもので、現在70歳以上なら1割の負担、69歳以下は3割の負担と言うことは皆さんご存知だと思います。しかし、入院して検査、手術となると数百万円かかることもあるかもしれません。3割負担だと100万円くらい支払う必要が出てくる、だから医療保険だ、ちょっと待ってください。日本には高額療養費制度というものがあり、1ヶ月に掛かる医療費の上限が決まっています。どんなに収入のある方でもひと月10万円を超えて支払うことはまずありません。通常の方であれば、45000円程度です。ですから、普通に貯金のある方は、医療に備えて医療保険に入る必要は基本的にはないわけです。私ならその保険料を積立貯金します。しかし、これは国民皆保険制度があるからで、アメリカの保険会社はこの国民皆保険制度のため日本の保険マーケットに参入できないわけです。次回は、アメリカがこのTPPを利用して日本にどんなことを迫ってくるか考えてみましょう。

第42回 「様々な頻尿」

 この原稿を書いている9/21現在、台風15号が、潮岬沖を通過しているようで、しばらく台風の被害らしい被害がなかった堺でも窓に打ち付ける雨風は強く、四国や名古屋の大雨が降っている地方はいかばかりかと心配になります。思えば今年は、自然災害の多い年で、新燃岳の噴火に始まり、東日本大震災、台風12号、台風15号と自然の力の強さに人間の無力さを痛感します。
 さて今回は、色々な頻尿を取り上げます。泌尿器科の病気で、頻尿といえば前立腺肥大症や過活動膀胱といった病気が、代表ですが、実は、そのような病気以外に頻尿を症状とする病気がたくさんあります。今回は、意外な病気が頻尿になることがあるので紹介したいと思います。
 教科書には、正常な排尿回数について1日7回まで、夜間はトイレに行かない、と書かれています。では、これを満たさない方々は全員異常で治療を要するのでしょうか?水分をたくさん取られる方は、当然尿量も増えますから回数が多くなるでしょうし、ビールをたくさん飲んだ日はトイレに1回くらい行かねばならない夜もあるでしょう。要は、当たり前のことですが、自分の排尿状態が、生活する上で困るかどうかが、治療を要するかどうかのポイントになってきます。夜間の排尿回数が同じ2回の方でも排尿後すぐ眠れる方は治療を必要としないかもしれませんが、すぐ眠れず1時間くらい悶々とする方は、回数自体を少なくするか、あるいはすぐ眠れるような治療が必要となるかもしれません。
 最近、高血圧の治療薬で従来の高血圧薬に利尿剤を入れた合剤を用いることが多くなってきました。そのような薬を内服されている方が頻尿を訴えて来られることも出てきました。この場合は、降圧薬の変更しか手がないので内科の先生にお願いして薬を換えてもらうことで頻尿は良くなります。また、ご自分では糖尿病であることに気がついていない方が、やはり排尿回数の多さを気にされ受診されることもあります。この場合の排尿回数の多い原因は、尿の中に糖が混じることにより尿量が増え、そのため喉が渇き、故に水分を取る、尿が作られるという医学的には多飲多尿といわれる症状が原因で、泌尿器科的な治療は必要でなく血糖のコントロールをすることで尿量も排尿回数も収まります。
 また、加齢や内科的な原因で腎臓が弱ることがあります。通常は、腎臓は夜、尿を濃縮し、量を減らして人が良く寝れる様にしますが、このような弱った腎臓は、夜に尿を作るようになります。その為、夜間の尿量が増えて排尿回数も増えるということが起きてしまいます。このような場合、前立腺肥大症や過活動膀胱の夜間頻尿のように薬への反応が良くないので実際には治療に困る場合が多いのですが、逆にここは泌尿器科医の腕の見せ所で、手を換え品を換えて何とか夜間の多尿を改善していきます。
 子宮癌や直腸癌の手術をするとどうしても膀胱のそばを切開したり切除したりする必要があるため、膀胱へ伸びる神経を傷つけてしまうことがあります。このような場合、手術の後、なかなかおしっこが出なかったり、出ても膀胱の中にたくさんおしっこが残ってしまい、そのため有効な膀胱の容量が小さくなり、頻尿になることが有ります。このような頻尿は、残るおしっこを少なくしてあげることが必要で、投薬や自分で残ったおしっこをカテーテルという管を使って出す自己導尿という方法を用いると頻尿は改善します。
 また、排尿困難を放置していると、膀胱の中に結石が出来て中をごろごろ動くことがあります。このような刺激も頻尿の原因になります。
 まだまだ、色々な病気で頻尿になりますが、要はおかしいなと思ったら我慢しないでまず、かかりつけの先生か泌尿器科医に相談することです。まず、その頻尿が異常なのか異常でないのか、異常なら治療が必要なのか必要ないのか、治療が必要ならどのような治療が良いのか、答えは必ず見つかると思います。

第41回 「今年の夏のすごし方」

 東日本震災からはや3ヶ月が過ぎました。依然としてニュースで見る被災地の状況は悲惨なものですし、福島原発の事故処理も遅々として進みません。現地で復興や事故処理に当たっている方々のご努力には本当に頭が下がります。東北から離れた大阪ですが、出来ることがあればお手伝いしたいと思います。
 もうすぐ、梅雨が明け夏本番となります。先日のニュースでは、約50%の電力を原子力発電に頼る関西電力でも今夏、電力不足が予想され、15%の節電の協力を要請しています。クリニック、自宅を振り返ってみると普段からそんなに電力を野放図に使っているわけでもなく、15%というのは結構厳しい目標ではないかと思います。せいぜい思いつくのは、テレビやコンピューターの主電源を切って、待機電力をなくすことやエアコンの温度を上げることですが、エアコンはすでにいつも28度くらいに設定していますし、仕事以外のときはエアコンも切っています。クリニックでは、電灯も省電力のLEDに交換する予定ですし、15%と言っても何をすれば15%になるのか関西電力には明確にして欲しいと思います。
 さて、ここで心配になってくるのは、熱中症です。エアコンを使うことを遠慮してしまうあまり、もし今夏も昨夏並みの猛暑であれば、熱中症になる患者さんがぐっと増えるのではないでしょうか?日本救急医学会でもそのようなことを心配していました。対策としては、高齢者はエアコンをつけるのをためらわない、冷たい飲み物で内側から冷やすということが挙げられていましたが、冷たい飲み物はともかくエアコンを使うことはためらう必要はないと思いました。テレビでは、扇風機を使うことが省電力であると勧められていますが、室温が上がった部屋で扇風機を使うことは、かえって熱中症を引き起こしてしまいます。使うときは、エアコンで室温を下げて、部屋の空気を効率よく循環させる目的で使う、あるいはエアコンが嫌いな方は、できるだけ複数個所の窓を開け、風通しを良くして使うなどの工夫が必要です。冷たい飲み物をどんどん取る必要はありませんが、水分の摂取はしっかりとしてください。私の診察でも、おしっこが近いので飲まないようにしています、など言われる方が何人かおられます。夜、水を飲まなくても脳梗塞にはなりませんが、昼間に水分を取らないと熱中症になってしまいます。気をつけましょう。
 水分の摂取をどの位すればよいかよく聞かれます。1日2L飲まねばいけないとか、いやそれでは足りないとか皆さんテレビの情報番組で言われていることを信じてしまいがちです。でも良く考えてください。冬と夏では必要な水分量は違いますし、同じ水分量を飲んでも出る尿の量は違います。私は、いつも尿量が少なくとも1000mlから1500mlくらいになるように飲んでくださいと説明しています。夏なら、3Lくらい飲まないと1500mlの尿は出ないかもしれませんし、冬なら2Lも飲めば1500ml以上出るかもしれません。おしっこの量なんか測っておれません、と言われる方には、尿の色を注意して見ていてくださいとお願いしています。茶色から黄色の濃いおしっこが出るようなら水分は足りていません、水分を追加してください、薄い黄色の尿なら適量です、色のない透明なおしっこが出ているようなら十分に水分は足りています。皆さんも一度注意して見てみられてはいかがでしょう。結構当たっていると思います。