コラム(第11回-第20回)

第20回 「尿失禁について」

 先日、クリニックがある堺市の医師会により“頻尿と尿失禁”をテーマにした市民公開講座が開催され、私はコメンテーターという役割で参加させていただきました。実際に、頻尿や尿失禁で悩んでおられる方や家族の介護をされている方が参加され、2人の先生による講演のあと質問コーナーでは、様々な質問と回答が行われ、実際に困っておられる方はこんなにもおられるのだと改めて実感させられました。

 さて女性の尿失禁はどのようなものなのでしょう。男性には男性の、女性には女性の体の違いからくる尿失禁の原因があります。尿失禁には大きく分けて切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁があり、

1)切迫性尿失禁は、突然襲われる強い尿意が原因でトイレに行こうとしても間に合わなかったり、あっと思ったときにはもう尿が漏れてしまう失禁で、この原因は様々ですが男性でも女性でも起こりえます。それに対し、

2)腹圧性尿失禁は、女性特有の尿失禁で出産を経験した約半数の方が経験したことのあり、大笑いしたときや咳をしたとき、あるいは坂道を下るときなどお腹に強い力が加わったとき尿が思わず漏れてしまうものです。

女性の尿は膀胱にたまるとき、外尿道括約筋とそれにつながる骨盤を支える骨盤底筋群で止められています。出産のため骨盤底筋群が傷ついたり、緩んだりすることがあり、更に加齢により筋肉が弱くなったりすると尿道に支えがなくなって腹圧がかかると動きやすくなり尿が漏れるといわれています。

<骨盤底筋が働いていないとき>

<骨盤底筋が働いていないとき>

<骨盤底筋が働いたとき>

<骨盤底筋が働いたとき>

 これに対する治療としては、理学療法である骨盤体操、薬物療法、そして手術です。
骨盤体操は、肛門の括約筋や膣を閉める運動を繰り返ししてもらいます。5秒から10秒ゆっくりと括約筋を締める運動を20回、またすばやく締めたり緩めたりする運動を20回、これを1セットとして1日4セットいろいろな姿勢(寝てしたり、立ってしたり、座ってしたり、四つんばでしたり)でしていただくと必ず1~2ヶ月でかなりの方が改善してきます。これでまだ不十分な方は、括約筋を閉める薬や膀胱の壁を緩めて尿がたまりやすくする薬を内服していただきます。これらのことを行っても十分な効果が出ない方には手術をお勧めします。手術は、2泊3日の入院でしている施設が多いようですが、尿道に特殊なテープを掛けるもので、局所麻酔または腰椎麻酔で約1時間程度の手術です。有効率は5年間で85%以上と安全で有効率の高い手術です。

尿失禁については、歳を取るとみんなそうなるからとか、お下のことは恥ずかしくて誰にも言えないと泌尿器科を受診することをためらっている方がたくさんおられます。(統計上も10人に1~2人くらいの方しか受診されていないそうです。) 我々泌尿器科医は、尿の悩みについては色々な治療方法を提示できると考えています。悩まれている方は、少しでも早く受診されることをお勧めします。

第19回 「尿路変更について」

前回の膀胱癌の治療の続きです。表在性の癌(この場合、内視鏡的手術を行い膀胱は残すことができます。)ではなく、不幸にして浸潤癌(腫瘍の根っこが筋層まで浸潤している癌)になってしまった方は膀胱全摘という手術が選択されます。これは、膀胱と周囲のリンパ節、尿道をすべて切除する手術で泌尿器科が行う最も大きな手術のひとつです。尿道を残すか取るかはケースバイケースですが、標準術式は尿道も一緒にとってしまうことです。後で述べる回腸新膀胱という尿路変更のときだけ尿道は温存されます。

膀胱を取ってしまったとき膀胱につながる尿管の扱いが尿路変更を決めます。一番簡単な尿路変更術は、膀胱と切り離された尿管をそのままお腹の皮膚に植えつける方法で
1)尿管皮膚瘻(にょうかんひふろう)といいます。

勿論尿管からは絶えず尿が出てきますので、これを集める集尿具 ( パウチ ) が必要で皮膚に袋を貼り付けて尿を溜めるということになります。また、尿管は細い管なのでこのまま皮膚に植えつけた場合うまく尿が出てこないで腎臓が腫れることが多く、尿管の中に尿管カテーテルという細く硬い管を留置し 1 ヶ月に一回交換することが必要になる場合があります。メリットは体への侵襲が少なく、手術時間も短くなるということです。

尿管をお腹の中を通して皮膚に出してくるためには十分な長さの尿管が必要ですし、尿管カテーテルなどの異物を留置しなければならないことも多くなります。そこでしっかりとしたチューブである腸、特に回腸を使った尿路変更が主流となってきました。世界中を見ても一番多く施行され安全性と機能の評価が高いのが
2)回腸導管(かいちょうどうかん)です。

小腸の最後の部分である回腸を約 15-20cm セグメントとして取り、片方を閉じて(正確には口側を閉じて)もう片方を皮膚に植えつけます。そして尿管を閉じた腸の底のほうに植えつける方法です。これですと、尿管はほとんど自然な走行で回腸セグメントに吻合できますし、あまり長さのことを気にする必要はありません。ただ腸を使った手術になりますので、回腸を取った後、回腸―回腸吻合の漏れがあると命取りになること、侵襲は尿管皮膚瘻より大きくなり、以前腸の手術をしていて腸の癒着が激しかったりするとこの手術はできません。また、この方法も回腸を通して尿が絶え間なく出てきますので集尿具の装着が必要です。

そこで、集尿具を使わなくても今までどおりに近い姿で排尿できる方法として
3)回腸新膀胱(かいちょうしんぼうこう)という方法ができました。

これは、 70-80cm の回腸をセグメントとして取り、一旦腸を切り開いて板状にして、もう一度袋状に縫い合わせて新しい膀胱を作る方法です。作った新膀胱をもと膀胱があった場所に置き、尿道と吻合、両方の尿管を新膀胱に吻合するといったかなり込み入った方法です。これですと集尿具を体に貼るなどというわずらわしいことは不要ですし、腹圧排尿にはなりますが、自然な感じで排尿ができます。しかし、この方法を取るためには尿道を残すことができる膀胱癌が対象で、すべての膀胱癌の方にできる方法ではありません。術後自己導尿をせねばならない、夜中に一回起きて排尿していただくなど管理が難しい尿路変更ですので、それを学ぶことができる比較的若い方に対して行うことが多いです。その他、大腸を使った結腸導管やどうしても尿道は残せないが集尿具も体に装着するのは嫌だという方のために回腸と上行結腸を使ったインディアナパウチといった特殊な方法もありますが、かなり限定された方に行う方法になります。

医学は、日に日に進歩していきます。尿路変更も以前と比べ格段に選択肢が増えました。また、最近のニュースを見ていると人工膀胱なる臓器再生の話題も出てきているようです。不幸にして膀胱を取らねばならないということになっても、今まで通りの生活ができる日も近い将来来るかもしれません。

第18回 「膀胱癌について」

今回から少し泌尿器科の癌についてコラムを書いていこうと思います。病院勤務医をしている頃は、ご近所の内科や外科の先生から血尿を訴える患者さんの診断を依頼され膀胱癌を見つけることが多かったですが、実は紹介される段階で優秀な先生方はほぼ診断をつけてきて下さることが多く、それを膀胱鏡検査で確認するという作業がほとんどであまり悩むことはありませんでした。開業して第一線で血尿を訴える患者さんの診察をすると血尿を呈する方の中には、膀胱癌は勿論、前立腺炎、腎出血、膀胱炎などでも血尿を呈する方がおられ、本当の意味で鑑別診断をしっかりせねばならないことが多く、また大病院ではどんな検査をしても許されるということがありますが、我々は侵襲の少ない検査を有効に短い時間で行い、かつ正確な診断を要求されるので、非常に緊張して診察せねばなりません。

さて膀胱癌とはどのような病気でしょう?膀胱は、丸いボールのような形をしていて中に尿を溜める働きをしています。そしてその壁は 4 層構造していて、おしっこに近い内側から
1. 移行上皮という粘膜、 2. その下の粘膜を支えている粘膜下層、 3. 膀胱の収縮に関与する筋層、 4. そして一番外側が脂肪層となります。癌は、一番内側の移行上皮にでき移行上皮癌と呼ばれ、膀胱内腔に成長しますが、同時に根っこを粘膜下層のほうへ張っていきます。手術をする際にはこの内腔に突出する癌を内視鏡で切り取ると同時に根っこも削り取らねばなりません。きちんとすべて削り取ることができれば治療は完了です。しかし、喜んでばかりはおられません。ここで問題になるのは、がん細胞の顔つきと根っこの深さです。根っこの深さについては、粘膜下層までで済んでいれば膀胱を温存できますが筋層まで浸潤している場合、浸潤癌と呼ばれ膀胱すべてを取らねばなりません。(膀胱がなくなりますので、当然膀胱の代わりになるものが必要になります。これについては次回コラムに書こうと思います。)

また、癌細胞の顔つきも問題になります。移行上皮癌の細胞の顔つきはグレード 1 、 2 、 3 と 3 段階あり数字が大きくなれば顔つき ( 悪性度 ) が悪くなります。膀胱癌は非常に再発しやすい癌で移行上皮があるところどこでも場所を変えて出てきます。そのため 3 ヶ月に 1 回膀胱鏡を行い、膀胱内に再発がないか確認するわけですが、この悪性度が高ければ再発する可能性が高くなります。一般的にはグレード 1 で 40 %、グレード 2 で 60 %、グレード 3 で 80 %といわれています。再発を繰り返すため 10 回以上手術をしている方もおられますし、再発を重ねて浸潤癌へ姿を変え膀胱を取らねばならないこともあります。

手術は、まずは内視鏡的に行われます。腰椎麻酔または全身麻酔下に尿道から内視鏡を膀胱内に挿入し、同時に挿入している電気メスを使って腫瘍を切除します。それに先立ち、正常に見える膀胱粘膜にも癌がないか調べるため何箇所か生検と言って生検鉗子と呼ばれる特殊な機械を使って組織を少しかじり取ります。そして十分に止血をして手術は終了です。病理検査の結果が癌の根っこが筋層まで行っている様なら後日改めて開腹手術で膀胱を取る手術を行います。

手術の前に行う画像検査で明らかに根っこが筋層深くまでいってきるときは手術前に、取った膀胱を詳しく調べて根っこが深くいっているときには手術の後に抗癌剤を使った化学療法を行って治療することがあります。これを手術前に行うことは腫瘍の根っこや大きさを縮小させてから手術をするというメリットがあり、実際する場合としない場合では数%ですが予後に違いがあります。また、手術後にする場合は、画像上見えない全身に散らばっているかもしれない癌細胞を小さいうちにやっつけるというメリットがあります。

当然早く癌を見つけることができれば、膀胱を温存しまた確実に治療をすることができます。膀胱癌の症状は、無症候性血尿といい、血が尿にまじること以外症状が乏しいことがほとんどです。血尿を健康診断で指摘されたり、ご自分で尿を見てあれ、と思われたときには迷わず泌尿器科を受診してください。痛い検査をされるのでは?という不安はよくわかりますが、最近の医療機器は非常によくなって痛みの少ない検査ができるようになりました。安心して受診してください。

第17回 「前立腺肥大症」

桜の花の開花が始まり、JR三国ヶ丘駅の桜の花もピンクの山のように咲き誇っています。私も診察の合間に桜の花を眺めるとほっとし、日本人は本当に桜が好きなんだなあと思います。お花見をする人も増えていると思いますが、この時期、花見酒をきっかけにおしっこが出にくくなり泌尿器科を受診される方もおられると思います。以前、頻尿の原因というコラムで少し述べたと思いますが、今回はもう少し詳しく前立腺肥大症という病気についてお話してみたいと思います。

どの教科書にも書いてありますが、前立腺は膀胱の直下にあり、本来は精液を作るくるみ大の臓器です。中を尿道が貫いていて歳を取ると徐々に大きくなってきます。これは歳を取ると髪の毛が白くなるのと同じで、加齢による変化なので男性であればどなたでも起こります。ただ、大きくなる程度とスピードが人によって異なるために症状が出る方と出ない方がおられるというわけです。前立腺が大きくなると起こる事は2つあります。ひとつは、中を通る尿道を圧迫して排尿時に気張らないと尿が出ないという症状や尿の勢いが悪くなってだらだらといつまでも尿が出続けるといった通過障害の症状ともう一つは、大きくなった前立腺が下から膀胱を押し上げるため膀胱を刺激し頻尿、残尿感など刺激症状です。このような症状が出てきてはじめて泌尿器科の扉をノックするというわけです。

治療の選択肢の第一番目はアルファブロッカーと呼ばれる薬です。狭まった尿道を広げる作用と膀胱、尿道に対する刺激症状を取る作用があるので、まず8割から9割の方によく効きます。また、このとき前立腺に炎症などがあり少しむくんでいるなあと感じるときは漢方薬や植物エキス製剤などを足して処方することがありますし、夜間頻尿や切迫感といわれる強い尿意を訴えられる方には抗コリン剤といわれる薬を少量加えたりすることがあります

中にはこのような薬物療法に反応せずなかなか症状が取れない方もおられます。このような場合、手術という選択肢をお話しするわけですが、現在行われている前立腺肥大症に対する手術はいろいろあります。しかしながら今もゴールデンスタンダードな手術として広く行われているのは経尿道的前立腺切除術と呼ばれるもので、脊髄あるいは全身麻酔下に直径1cmほどの内視鏡を尿道に挿入し、電気メスを沿わせて挿入し肥大した前立腺を中からかんな削りのように削り取ってくる手術です。前立腺の大きさにもよりますが約1時間の手術で2週間くらいの入院が必要です。手術により90-95%の方は満足され確立された手術といえるでしょう。

特別な場合ですが、前立腺が大きく手術の適応はあるが全身状態が悪く手術ができない、またはそれ以外に膀胱の神経や筋肉に問題があり手術をしても自分で排尿が難しいと判断された場合、バルーンカテーテルという尿道カテーテルを留置したり、間歇的自己導尿という尿意のあるとき自分で尿道に細いカテーテルを挿入して尿を採る方法もあります。

私どもでは、前立腺肥大症の患者さんにおしっこの勢いを見る検査(特殊な器械にいつもどおりおしっこをしてもらうだけです。)を行い、その後残尿を測定しています。この検査で、投薬治療を行っても、腹圧排尿の強い方や残尿の多い方(常時100ml以上の残尿を認める方)には、手術をお勧めしています。

第16回 「血液検査結果について4(検血その他)」

今回は、血液検査の結果の最後のシリーズです。最後は、CRPと赤血球、白血球、血小板などについてお話してみます。

CRP : C Reactive Protein (C反応性蛋白)といいます。肺炎双球菌という細菌のある部分と反応する蛋白質として発見されましたが、実際には体の中で急性炎症が起こると上昇するマーカーとして使われています。熱が出てしんどいとき、骨折や怪我をして体に負担がかかるとき、また膠原病という難病にかかったりするとこのCRPが上昇してきます。なんだか体がしんどくてご飯が食べられないといったとき、このマーカーが高くて後で述べる白血球も上昇していると体に細菌あるいはウィルス感染が起こって炎症が起きていることが示唆されます。この炎症の程度によって外来治療でいけるのか入院治療が必要なのかなどの判断にも使われますし、この数値を追いかけることで治療効果を見ることもできます。

RBC : 赤血球数です。赤血球は、体の細胞の隅々に酸素を送り届けるのが仕事です。この数値が低ければ貧血ということになりますが、勿論Hb(ヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット)という数値と併せて貧血か否か判断します。貧血にもいろいろなタイプがあり、同時に測定するMCV(赤血球の体積です)が高く、貧血であれば大球性貧血といいビタミンB12や葉酸の欠乏、慢性肝疾患、甲状腺機能低下などを疑いますし、MCVが低く、MCH(赤血球の鉄分の量です)が低ければ鉄欠乏性貧血を疑います。いろいろな組み合わせで貧血のタイプを調べることができます。

WBC : 白血球数です。体外からの感染に対し立ち向かう免疫という仕事を担っています。細菌が相手であれば好中球という成分が増えて戦いますし、ウィルスというものが相手であればリンパ球が増えて戦います。アレルギーを呈す方の場合、好酸球という成分が増えます。抗癌剤の投与を受けている場合、白血球数が低下して細菌やウィルスに感染しやすくなり隔離が必要になったり、移植などを行うと免疫を抑制するのでリンパ球が減ってやはり感染しやすい体になるので人ごみを避けるなど必要になります。

Plt : 血小板です。わかりやすくいうとかさぶたを作る働きをしています。出血を止める機構は複雑でいろいろな成分が関与していますが、この血小板はその中でも中心的な働きをしています。増えすぎることはあまりなく、減る場合はいろいろな状態を考えなければなりません。急性白血病をはじめ特発性血小板減少症、慢性肝炎などでも血小板の数は減少します。また、皆さんの中でも内科の先生から血をさらさらにする薬としてバイアスピリンやバファリン81などの薬を処方されている方もおられるかと思いますが、これは血小板の固まる力を阻害する副作用を利用して血栓がおきにくくしているのです。

4回にわたって血液検査結果の見方を書いてきました。勿論もっと詳しい検査はいくらでもありますが、一般的にスクリーニングとして外来でされる検査は以上のようなものだろうと思います。高価な血液検査をしてもらったが何のためにしたのか、説明してもらったがよくわからないというときこのコラムを読み返していただければ幸いです。自分の健康は自分で守る、我々医師はそのお手伝いをしているだけなのです。

第15回 「血液検査結果について3(高脂血症)」

今回も血液検査結果の項目の説明をしたいと思います。

TG : 中性脂肪といいます。 3 つの脂肪酸がグリセロールにくっついたもので、人間が生活するためのエネルギー源として働いています。脂肪を含んだ食事をすると小腸で消化吸収されます。ばらばらの TG がそこでアポ蛋白と呼ばれるたんぱく質と結合してカイロミクロンと呼ばれる大きな塊となって血液中に流れていきます。ですから食後は必ず TG は上昇します。血液中を流れるカイロミクロンは、これも血液中に存在するリポ蛋白リパーゼと呼ばれる酵素によって分解され小さくなり皮下脂肪や肝臓に取り込まれ貯蔵されます。

中性脂肪が高値となるとき、考えられる疾患は最初の段階のアポ蛋白の異常がある場合  ( 遺伝病の一種でかなり稀です。 )  や、アポ蛋白リパーゼの異常でカイロミクロンが小さくなれず肝臓に取り込まれないために起こる ( これも稀です。 )  ことがあります。
しかし、通常の場合アルコールの取りすぎ、摂取カロリーオーバー、炭水化物あるいは脂肪分の取りすぎ、糖尿病のある方の場合血糖コントロール不良が考えられます。まずは、カロリー制限、飲酒制限、脂肪食制限で速やかに低下することが多いです。

T-Chol : 総コレステロールといいます。コレステロールには、血管にたまったコレステロールを肝臓まで運んでくれる善玉コレステロール (HDL) と動脈硬化の原因になる悪玉コレステロール( LDL )があります。食事由来のコレステロールはわずか 20 %で、ほとんどのコレステロールは肝臓で合成されています。コレステロールを多く含む卵やイカを控えてください、というのは食べすぎに気をつけてください、という意味で最近 1 日 1 個の卵を食べてもコレステロールは上昇しないというデータが出るくらいです。悪者のように言われるコレステロールですが、体の中では重要な役割を担っています。ホルモンを合成する成分になったり、細胞の骨格を形成する役割を担ったり胆汁酸として食物の消化に役立ったり、確かに高すぎるコレステロールは動脈硬化の原因になり心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことは知られていますが、少なすぎることも問題で癌の発生が高くなるという報告もあります。

コレステロール値が高くなる原因は、基本的に食事性のコレステロール摂取過剰か肝臓での合成の亢進です。腸におけるコレステロールの吸収を防ぐため繊維質の野菜を多く摂取するとよく、オリーブ油などに多く含まれるオレイン酸、青魚に含まれる EPA などが善玉コレステロールを増やすといわれています。また、過食は、コレステロールの原料を増やしますのでよくありません。息を弾ませる程度の歩行でも善玉コレステロールは増えますので、ウォーキングはお勧めです。 

糖尿病、高血圧と並んで高脂血症は、メタボリックシンドロームを引き起こす原因となります。動脈硬化が起こってから悔やむより早めに生活習慣の改善で正常化したいものです。

第14回 「血液検査結果について2(腎機能)」

今回も血液検査結果の項目の説明をしたいと思います。

Crn : クレアチニンといいます。難しい話をすると、これはクレアチンといわれる筋肉の収縮のエネルギー源の物質の代謝物です。腎糸球体でろ過されると再吸収されずに尿中に排泄されます。
そのため、 BUN と比べ食事や尿量など外的因子の影響を受けず、いつもほぼ一定の値を示します。
通常、腎機能が半分になってもこの値は変化せず、この値が増えるということはかなり腎機能が悪化していることを示します。

BUN : 尿素窒素といいます。これは、体内におけるたんぱく質の最後の代謝物です。昔からクレアチニンと共に腎機能の評価に使われてきましたが、脱水、心不全、消化管出血、高たんぱく食摂取など外的要因に左右されるところがあり、クレアチニンと比べ値は変化しやすいです。

UA : 尿酸値です。痛風といえば皆さんもあーと思われると思います。痛風は風が吹いても痛むといわれるくらい痛い病気です。尿酸値が上昇するとなぜか足の親指の第一関節にこの尿酸ナトリウムの結晶が沈着し、痛むといわれています。足だけではなく、この結晶が腎の尿細管に沈着すると痛風腎といわれる状態になり腎機能はさらに悪化します。また、尿酸が尿中に出てくることで尿酸結石の原因になるだけでなく、尿の酸性度が強くなりシュウ酸カルシウムや燐酸カルシウムなど他の成分の結石の生成原因にもなります。上昇の原因は、プリン体を多く含む食物 ( ビールや肉類 ) の摂取や腎尿細管において尿酸再吸収が亢進することが原因とされています。

我々泌尿器科医は、これらの値が上昇し腎機能不全である思われる場合、まず超音波検査で水腎症がないか、つまり尿管より下位の場所で閉塞など起っていないか調べます。腎内に尿の貯留があるとこれを水腎症といい、尿管以下の場所で閉塞があることを疑います。これを腎後性腎不全といいます。この場合、尿を別のルートで逃がす必要が出てくるため、腎瘻 ( 背中からチューブを直接腎臓へ留置する方法 ) を造設したり、狭くなった尿管に尿管ステントと呼ばれる硬く細いチューブを留置する必要が出てきます。蛇足ですが、腎後性腎不全に対し、腎前性腎不全と腎性腎不全があります。腎前性の場合、腎に至る手前、つまり腎動脈の狭窄や血圧が低い(ショック状態)ために腎内にろ過すべき血液が十分に流れてこないことが原因ですし、腎性の場合は、まさに腎内の糸球体などに問題があり尿を作れない ( 糸球体腎炎、糖尿病性腎症、ループス腎炎など ) 状態です。
いずれの場合も、腎不全に至る原因の検索と正しい対処が必要になってきます。

第13回 「血液検査結果について(肝機能)」

今回は、私どものクリニックに通われる患者さんからのリクエストで血液検査結果について少し説明したいと思います。皆さんは、いろんな医療機関で血液検査を受けられた後、検査結果の説明を受けられていると思います。その場では、説明されてわかった気になっても時間がたてば、検査結果に書いてあるアルファベットの意味やその値が意味することがわからなくなったという方は多いと思います。今回は、肝機能について述べたいと思います。 

AST ( GOT ) :アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼといいます。これは、人が生命活動する上で必要な酵素と呼ばれるたんぱく質のひとつなのですが、肝臓、腎臓、筋肉、心筋の細胞内にたくさん含まれていて、これらの細胞がつぶれる状態、たとえば肝炎、肝臓癌、心筋梗塞などで数値が上がります。勿論、筋肉にも多く含まれるため激しい運動や多発性筋炎と呼ばれるような筋肉の病気でも上昇します。
ALT ( GPT ) :アラニンアミノトランスフェラーゼといいます。 AST と同じで生命活動には必要な酵素と呼ばれるたんぱく質の一種です。 AST に比べ、肝臓に特異的に存在するため値の上昇は肝臓の障害を強く示唆します。
LDH :乳酸脱水素酵素といいます。これも酵素の一種で、体内のあらゆる組織の細胞内に存在し、その細胞がつぶれることで血液中の値が上昇します。 LDH が高いからといって診断的意義は高くありませんが、急性、慢性を問わず肝炎のときは高くなりますし、心筋梗塞や悪性腫瘍の際も上昇します。肝疾患で見る場合、必ず AST,ALT とセットにしてみる必要があります。
ALP :アルカリフォスファターゼといいます。これも酵素の一種で、肝臓疾患で上昇しますが、特に胆汁の流れが悪くなると上昇する性格があります。骨にもよく含まれており、骨折、関節炎など骨疾患で上昇します。成長期のお子さんではかなり高くなり、腰痛持ちのお年寄りも少し高い値を示すことが多いです。
γ GTP :ガンマグルタルトランスペプチターゼといいます。これも酵素の一種ですが、胆汁の流れが悪くなると上昇するほか、アルコールの多飲、脂肪肝等でも上昇します。私どものクリニックでもアルコールよく飲むのでγ GTP が心配でといわれる方はよくおられます。
総ビリルビン  (T-Bil) :ビリルビンには肝臓である変化を受けて排泄される直接型ビリルビンと変化を受けずに排泄される間接型ビリルビンがあります。通常測定するのは、直接方と間接型を足したもので一般的には黄疸があるなしと表現されると思います。胆汁の流れが滞ると体内にビリルビンが蓄積し体が黄色くなりますが、その際には黄疸がでたと言われるのはご存知の通りです。空腹時には多少高く出る場合があります。 

このほか肝機能を調べて評価する項目はたくさんありますが、一般的にスクリーニングするのはこのくらいだと思います。私どもは、ひとつの数字の高い、低いをみるのではなく、いろいろな病気を想定しながら、項目の組み合わせで異常の理由を考え、わかりやすく皆さんに説明していこうと考えています。

第12回 「尖圭コンジローマについて」

陰茎にできるいぼ、気がつくと徐々に大きくなってくる良性腫瘍の一種です。原因はヒューマンパピローマウィルス(HPV)と呼ばれる病原体が、肛門や陰茎の包皮、亀頭、外尿道口周囲など外陰部の湿潤な部分の細胞に感染することによって起ります。感染は、ほとんどの場合、性行為による接触感染でおこり、感染から約数週間から数ヶ月と幅広い期間を経ていぼの形成が起ります。女性に感染した場合、子宮頸癌に進んでいくことがあり、子宮頸がんの患者さんのパートナーを診察すると尖圭コンジローマがあったということもあります。

よく泌尿器科に陰茎にいぼができました、と青い顔をして受診される若者の場合、亀頭の辺縁にできる白色ー淡黄色のぶつぶつであることが多く、フォアダイスといわれるもので正常なものです。
また、尖圭コンジローマと思っていても病理検査をすると癌細胞が含まれていることもあり注意が必要です。いずれにしても一人で悩まず、恥ずかしがらず、一度泌尿器科を受診され専門的に見てもらうのが近道だと思います。

フォアダイスの場合、治療の必要はありません。ただ、気になる人は美容整形の意味で電気焼灼することができます。あくまで美容整形ですので健康保険は利きません、自費診療になります。
尖圭コンジローマの場合、治療方法は、1)電気メス、高周波メス、レーザーなどでの焼灼術、2)液体窒素を用いた凍結療法、3)抗癌剤入りの軟膏(5-FU軟膏)塗布などの方法があります。
焼灼術が一般的ですが、大きな病院などでは皮膚科で凍結療法を行っています。抗癌剤入り軟膏塗布は、健康保険が利きませんので自費診療となります。

原因はウィルスによる感染なので、治療後も感染部位から何度も再発することが多く、同じ場所にできたり、場所を変えてできたりすることがあります。直ったと思わず、経過観察が必要です。また、パートナーに接触感染していることもありますので、パートナーの婦人科での診察も必ず受けて頂かねばなりません。

当院では、高周波ラジオ波メス(サージトロン)を用いた、切除および焼灼を標準治療として行っています。麻酔テープを貼付後、局所麻酔を加えできるだけ痛みを除いた後、治療を開始します。再発を繰り返す場合、5-FU軟膏塗布を自費治療として行っていますが、皮膚炎、潰瘍を起こす場合があり、十分な説明をし、間違った塗布方法をしないよう注意しています。治療後、3-7日後に再診していただき、傷のチェックを行い、治療は終了します。

第11回 「前立腺癌マーカーPSAについて」

PSA とは、前立腺特異抗原と呼ばれ前立腺細胞の中に存在するたんぱく質です。その働きは、精液を固まらないようにするもので、本来は癌とは何の関係もありません。この PSA が血中に漏れ出てきたものを我々が測定しているのです。しかしその有用性は優れたもので、前立腺に特異的で前立腺癌の発見、治療効果を見るには最適のものです。正常値は、一般的には 4.0ng/ml 以下とされており、 4.0ng/ml 以上であれば癌を疑わなければなりません。勿論、 4.0ng/ml 以上の方が皆癌であると言うわけではなく、前立腺の大きさ、前立腺の炎症の程度などによっても数字は上がったり下がったりします。日本の泌尿器科専門医の中でも 4.0ng/ml 以上は全員直ちに生検だといわれる方もおられますが、 4.0ng/ml 以上 10ng/ml 以下のグレーゾーンといわれる方の生検における癌の検出率が 10 % -20 %といわれる中で全員即時生検というのは少し経済的にも、効率的にも無駄が多いような気がします。そこで検査をする以上できるだけ癌の出そうな人をピックアップして検査をするのがよいと考えられます。

一般的に、より癌を検出するためには、 

1) PSA 増加速度( PSA velocity ) 1 年でどのくらい PSA が上昇するのかということです、

2) F/T 比の測定: PSA は単独で存在するフリー PSA(free PSA) とあるたんぱく質と結合して存在する PSA があります。癌になるとフリー PSA の割合が減ることが知られており全体の PSA(total PSA) との比を調べることにより、より癌が疑われるか知ることができます。

3) PSA 体積比( PSA density ):前立腺が大きければ当然 PSA が高くなりがちです。 1cm3 当たりの PSA の値を計算し、その値が高ければより癌が疑われます。

などが使われます。

私どもではまずグレーゾーン( PSA4.0ng/ml-10ng/ml )の方については、 3 ヵ月後の PSA を再検し、前回値と比べます。そのとき、 F/T 比も測定し、より癌が疑われるか否か調べます。もし癌が疑われる場合、 MRI の検査をお勧めします。 MRI は鋭敏な検査で前立腺を詳しく画像に描出してくれます。ここでも癌が疑われる場合、生検をお勧めしています。生検については、以前のコラムで述べておりますのでそちらを参照していただければよいかと思います。日本人でも前立腺癌は年々増加しています。早く見つけることができれば、治療の選択肢も増えますし、根治の可能性も高まります。 50 歳以上の男性は年 1 回の PSA 測定をお勧めします。