コラム(第1回-第10回)

第10回 「勃起不全(ED)について」

男性にとって勃起というものは、日常生活では必要な時間というのは限られているのですが、無いと困るという実に奇妙な機能です。自分が男性であることを認識するために重要であると同時に、パートナーとのよき関係を維持するため、また次の時代へ自分の遺伝子を伝えていくためには必要な現象でもあります。我々のクリニックには 19 歳から 78 歳までの方が ED を訴えて受診され、非常に幅広い年齢層の方が ED で悩んでおられることを再認識させられます。原因は、高齢者の方は糖尿病、高血圧、高脂血症など生活習慣病を長い間罹患されていて、勃起能に障害が起きている方が多いですし、若年者の方では、過緊張や過去の失敗からくる自信喪失のためうまく勃起できない、勃起が持続しないという方や仕事のストレスなどが原因という心因性のものが多いようです。

いずれの場合も、治療の第一選択はバイアグラ、レビトラのような PDE-5 阻害剤といわれる内服薬です。

通常の勃起では、性的興奮により海綿体の細胞で L- アルギニンというアミノ酸から NO( 一酸化窒素 ) がつくられ、これが可溶性グアニル酸シクラーゼと呼ばれる酵素を活性化させサイクリック GMP を産生します。このサイクリック GMP が海綿体の平滑筋を弛緩させ勃起を促すのですが、サイクリック GMP は PDE- 5という酵素によって分解されます。つまりサイクリック GMP をたくさん作って勃起を助けてやるためには PDE- 5を阻害(妨げる)してやればよいわけです。こうしてバイアグラやレビトラが生まれたのです。重度の糖尿病、骨盤の手術の既往、脊髄の障害がない場合、その有効性は 90 %を超え非常に有効な薬であることがわかります。残念ながら、性的な興奮が、神経により伝わらないとこの経路はうまく働きません。骨盤の手術(膀胱癌、前立腺癌、直腸癌の手術など)を受けられた方、重度の糖尿病があり神経障害のある方、脊髄損傷がある方はこの性的興奮が勃起神経を通して陰茎海綿体に伝わりませんので有効率がかなり悪くなるわけです。

しかし、陰茎海綿体そのもののダメージがなければ陰茎海綿体注射という方法があります。プロスタグランディン E1 という薬を陰茎海綿体に注射することで、海綿体の平滑筋や流入動脈の弛緩が起こり勃起へと導かれていきます。バイアグラ、レビトラの無効な方に行うことが多いので有効性は 70-80 %といわれていますが、実際はバイアグラなどと変わらないと考えられています。ただ、陰茎に注射をするので注射が嫌いな方は不向きかもしれません。

健康保険を効かせての治療となると漢方薬を中心とした内服薬となります。バイアグラなどと比較すると有効性は比べるべくもありませんが、副作用も少なく勃起能だけではなく体全体の調子がよくなったと喜ばれることもあります。

当クリニックでは、個人個人の求めるゴール、希望の手段をよくお聞きし、勃起ができた、できなかったという結果だけではなく、あそこで相談してよかった、何か肩の荷が下りたといわれることができる、オーダーメイドな治療を目標としております。

第9回 「前立腺癌と針生検」

今回は、現在トピックな疾患である前立腺癌についてお話してみたいと思います。現在、前立腺癌の新患者の発生率は人口10万人当たり約20人弱といわれています。ですから、私どものクリニックがある堺市(人口80万人)では、男女比が1:1として毎年、80人近くの方が新たに前立腺癌と診断されていることになります。前立腺癌は他の癌と比べて進行がゆっくりしていますが、発見時リンパ節や骨に転移をしていることもあり、また他の癌同様増殖の速いタイプもありますので早く見つけるに越したことはありません。そこで強力な診断の助けになるのがPSA(前立腺特異抗原)といわれる癌マーカーです。
一般に4ng/ml以下は正常とされていて4ng/ml以上であれば癌の疑いがあるとされます。それでは、PSA 4ng/ml以上の方はどう診断を進めていくのでしょうか?

我々は、まず3ヵ月後にPSAの再検査を行います。PSAは、血中では大きく分けて2種類の形で存在します。ひとつは、フリーPSAと呼ばれ、PSA単独で存在します。また、アルブミンやアンチキモトリプシンと呼ばれる蛋白と結合して存在するPSAもあり、癌の際は、フリーPSAが少なくなるとされています。そこで、3ヵ月後に再検査する際、このフリーPSAも測定し、より癌が疑われるか否か調べることになります。再検査でもPSAが高い場合、MRIという画像検査を行うことになります。これで前立腺内部を詳しく画像化し、癌と考えられる部分があるかどうか調べることになります。これらの検査を行っても癌の疑いがはれない場合、いよいよ前立腺針生検という検査をお勧めすることになります。通常、この検査は2泊3日、あるいは1泊2日で行う施設が多いようですが、私どもでは、利便性を考えて日帰り生検を行っています。方法は、お尻にある仙骨裂孔といわれる場所から麻酔をかけ(仙骨麻酔)、局所の痛みを十分にとってから直腸に超音波検査の装置を挿入し、そのガイド下に、会陰から針を挿入し安全に前立腺の組織を採取するというものです。時間は麻酔をかけて検査終了まで小一時間くらいでしょうか。その後、約2時間ほど休憩していただき体調の変化のないことを確認の上、帰宅していただきます。麻酔をかけたということから安全上、検査当日は車での来院はできません。できれば家族の方に迎えに来ていただいたほうが安心です。

我々が、経会陰式の生検を行っているのは、経直腸式の生検(直腸から針を挿入して前立腺の組織を採取する方法)では、数%(つまり100人に数人)急性前立腺炎などの合併症を引き起こし 、緊急入院が必要になることがあるからです。我々の経会陰式であれば、ほぼ清潔に施行でき、急性前立腺炎を引き起こした例は皆無です。1週間後に来院していただき、病理検査の結果をご説明することになります。

以上検査の流れをご説明しましたが、前立腺癌は治療方法も増え現在、手術、放射線療法、ホルモン療法、超音波療法(保険適応外です)などいろいろな方法が選択することができます。早く、癌を見つけることができれば、治療の選択肢も広がりますが、発見が遅れれば、治療の選択肢が狭まるのみならず、命をも脅かす恐ろしい病気です。年に1回のPSAのチェックとその後の必要な検査を正しく受けていただくことを切に願ってやみません。

第8回 「腰痛」

腰痛というと症状としては最も一般的なもののひとつで、幅広い疾患でこの症状が出てきます。腰の痛みを訴えられて泌尿器科に来院される方はたくさんおられますが、泌尿器科で腰痛というと腎臓の痛みで、様々な病気で腰痛が出現します。

一番多い原因は尿路結石と呼ばれる、尿管結石、腎結石で、腎臓でできた石が腎臓にあれば腎結石、腎臓から動いて尿管に落ちれば尿管結石という呼び名に変わります。呼び名が変わるだけでなく症状は劇的に違います。腎結石の場合強い症状が出ることはまれで、なんとなくだるい腰痛や、やや濃い色の尿 ( 実は尿中に白血球や赤血球が混じっています。 ) が出たりするだけです。それに対して尿管結石は腎臓と膀胱をつなぐ細い、やわらかい尿管に硬い石が落ち込むわけですから強烈な痛みが発生します。七転八倒の痛み、吐き気を伴う痛みが襲ってきます。救急車で運ばれることも少なくありません。痛みの原因は 3 つです。

1)結石が尿管に詰まることにより尿が腎臓の中に溜り腎臓がはれる痛み、 ( これがもっとも強烈で吐き気を伴う痛みとして認識されます。 ) 

2 )結石が尿管を刺激して尿管の痙攣を誘発する痛み。

3)結石自身が尿管を傷つけながら移動する(落ちていく)痛み。

これらの痛みは、結石が動くたびに場所と痛みの程度を変えながら徐々に下腹部へと移動していきます。また、痛みとともにコーヒー色、または赤黒い肉眼でわかる血尿も出ます。最後に膀胱炎のときのような症状、頻尿や排尿時痛、残尿感などがでてくるともう結石は膀胱の近くまで来ています。あるとき突然これらの症状が消えると膀胱内に結石が落ちた証拠です。次の排尿のときに結石は尿と一緒に出てきます。尿道のほうが結石よりはるかに広いので痛むことはまずありませんが、まれに結石が大きくて尿道にはまり込んでしまう場合があります。(尿道結石)

次に多いのは腎盂腎炎です。膀胱炎を放置した場合や膀胱尿管逆流症(近日中にコラムで詳説します)がある場合、高熱を伴って左右どちらかの腰痛が起きます。午前中は平熱でも夕方に 39-40 度くらいの発熱を起こしことが特徴です。

その他、膀胱癌、尿管癌、腎盂癌、腎癌、前立腺癌などの悪性腫瘍も腎臓からの尿の流れを停滞させ腎臓の腫れのため、癌そのものの痛みのため腰痛を引き起こすことがあります。

腰痛を訴えられて私どものクリニックに来られた場合、まず検尿、超音波検査を行います。尿中に赤血球、白血球が出ていないか(血尿、膿尿がないか)、悪性を疑う細胞が出ていないか注意深く検尿を行います。次に超音波検査で腎臓内に結石がないか腫瘍の影がないか尿の停滞を示す水腎症がないか調べます。ここで異常があった場合、排泄性腎盂造影検査(造影剤を点滴し造影剤が尿となって出てくるところをレントゲンで撮って尿路に異常がないか調べる検査)を行います。

治療は、結石の場合、まずは座薬や経口薬で痛みのコントロールを行います。結石そのものに対しては、そのサイズ、場所によって治療方法は変わりますが、一般的には 8mm 以下の結石であればしばらく排石促進剤をのみながら自然排石を期待して経過観察を行います。 8mm 以上の結石の場合、または自然排石してくれない結石の場合、体外衝撃波砕石術という手術が第一選択になると考えられます。その他、結石の場所、大きさに応じて内視鏡手術や開腹手術などが適応になります。

腎盂腎炎の場合、抗生剤の投与と安静が基本的な治療方針となります。水分をしっかり取ってもらい尿量を増やすことは言うまでもありません。

泌尿器癌の場合、その癌に応じた治療が優先されます。手術、抗癌剤、放射線療法、免疫療法など最近の医療手段の進歩は目を見張るものがあります。

当クリニックでは、腰痛の原因の検索、治療、適切な病院紹介を迅速に行っています。

第7回 「下腹部不快感」

おしっこをした後、または 1 日中ずっと下腹が不快に感じることはないでしょうか?この不快感は人には説明しにくいタイプの症状です。原因は様々で、大腸や膀胱の炎症、骨盤骨や筋肉の炎症、女性なら子宮、卵巣を含めた生殖器の異常、男性なら前立腺の炎症が考えられます。原因が様々でいろいろな症状を呈する不快感が多いのでここで、泌尿器科の病気以外のものを除外するためにすでに婦人科、胃腸科で異常なしと診断された方を想定して原因を考えてみましょう。

女性では排尿後の不快感というものが多いようです。たとえば、頻尿があるため膀胱に尿が溜まらず、排尿してもすっきりしないと訴える方や、尿検査ではわずかに汚れがあるものの細菌感染とまではいえない慢性膀胱炎の状態の方もおられます。我々は、治療として頻尿のある方はまず頻尿を止め、しっかり膀胱内に尿を溜めることができるようにすること、そして残尿もなく不快感だけが続く慢性膀胱炎の方は漢方薬によって炎症を抑えること、ひいては炎症が起こりにくくする体質転換のような治療がもっとも良いのではないかと考えています。

男性の方では前立腺に炎症を起こす前立腺炎がこの症状のトップバッターです。 30 歳から 40 歳くらいの仕事が忙しくストレスの多い方に良く起こる病気です。仕事が忙しくなり、休養が十分に取れないときや宴会続きで疲れがたまったときこの症状は出てきます。下腹部の不快感といった漠然としたものから、鼠形部 ( 大腿の付け根 ) の痛み、睾丸痛、下腹部痛など多彩な症状を引き起こします。教科書では細菌性慢性前立腺炎、非細菌性慢性前立腺炎と検査で細菌感染があるかないかで分けていますが、簡単にいうと疲れやストレスなどで免疫機能が低下すると尿道にいる常在菌(普段から尿道に存在するがおとなしく炎症の原因にはならない菌)が暴れだし前立腺に移行して炎症を引き起こすようです。この時前立腺をマッサージした後で得られる尿に細菌を証明できれば細菌性、できなければ非細菌性と区別しているだけで基本的には同じものではないかと我々は考えています。

治療は、まず抗生剤を服用していただきます。不快感が強く仕事に集中できない場合には消炎鎮痛薬も併用します。さらに炎症を抑える効果のある生薬や漢方薬を服用していただき前立腺内の環境を整えていきます。しかし、治療の基本は患者様の生活習慣の改善です。深酒、夜更かしや不規則な生活は治療を遷延化させてしまいますので注意が必要です。

第6回 「排尿時痛(膀胱炎)」

今回は、尿路感染症であり女性に多い膀胱炎を考えてみます。患者様が言われる症状は、おしっこが近い、おしっこの終わりに痛くなる、下腹部に気持ち悪い感じが出るなどです。膀胱炎は、書いて字の如く膀胱に炎症が生じる状態で、一番多いのは、たまたま外から細菌(一番多いのは大腸菌です。)が入ってきて膀胱内に感染を起こしてしまった単純性膀胱炎です。特に女性の場合は尿道が短いため常に細菌が膀胱内に入ってきていると考えてください。排尿するという行為は、尿で細菌を外に洗い流しているということなのです。ですから水分を制限して尿の回数を減らしたり、尿を我慢したりすることは膀胱炎の原因になります。また性行為もよく膀胱炎を起こすきっかけとなります。性行為後によく膀胱炎を起こされる方は、行為後に排尿をして寝るようにしてください。また、冷えや疲れなどで免疫状態が低下してしまうと普段は排除できる細菌が感染して膀胱炎となってしまうことがあるので注意が必要です。治療は、細菌に感受性のある(効果のある)抗生物質の内服と水分をしっかり取って排尿量を増やすことです。通常 2-3 日で症状はよくなりますが、“直った”と自己判断せず指示された量の抗生剤を内服することが大切です。細菌量が減少すると一見よくなったように見えますが、放置すると細菌がまた増殖し症状が悪化することがあるからです。中途半端な治療を繰り返すと抗生剤に抵抗する細菌を生み出し治療に抵抗する感染症になってしまうことがあります。

膀胱炎を頻繁に繰り返される方の中には、原因がある方がおられます。男性の場合、前立腺肥大症、神経因性膀胱などおしっこが出にくい状態が起き、排尿してもおしっこが膀胱内に残る“残尿”がある場合、膀胱内に細菌感染を生じることがあります。流れがよどむところには細菌感染が起こりやすいのです。この場合、膀胱炎の治療と原因疾患の治療が必要になってきます。(前立腺肥大症、神経因性膀胱については日を改めて詳説したいと思います。)

細菌感染はないのに検尿を行うといつも尿が汚れている方がおられます。症状はないかあっても非常に軽いものです。原因を調べても治さねばならないようなものはなく、抗生剤も有効ではありません。この場合私どもでは漢方薬を使って症状の改善を行います。勿論症状のない場合、経過観察のみで投薬は必要ありません。

特殊な膀胱炎として間質性膀胱炎というものがあります。細菌感染ではなく、膀胱粘膜下の間質と呼ばれるところに炎症を生じた膀胱炎で排尿時痛、頻尿などが強く一種のアレルギー性疾患と考えられています。悪化すると萎縮膀胱といって膀胱自体が尿を溜める能力を失ってしまうこともあります。

治療はなかなか難しいですが、投薬治療や薬物の膀胱内注入治療などが中心で、ひどい場合には麻酔下で膀胱内を水圧で無理やり広げたり、腸を使って膀胱を拡大したりする方法がとられることもあります。

第5回 「排尿時痛(尿道炎)」

泌尿器科にはいろいろな症状を持つ患者さんが駆け込んでこられます。我々からみると同じ病気でも患者さんの表現は様々です。私はなるべく誘導尋問にならないようできるだけ患者さん自身の言葉で表現していただいていますが、時には??となる場合もあります。

排尿時痛、つまりおしっこをするときの痛みも皆さん様々な表現をされます。淋病のときの排尿時痛は飛び上がるほど痛くて、私が学生の頃は焼け火箸(ひばし)を尿道に突っ込まれたような痛みと教えられました。ところが時代が変わると焼け火箸そのものがなくなって(最近の若い方で火箸をご存知の方はそんなにいないでしょう。) “ちょっとづつしかおしっこが出ないです。”とか“すごく痛いです。”といわれて受診される方、また痛みについては我慢されているらしく“膿で下着が汚れます。”といわれる方、股間を指差し“股が痛い!!”と訴えられる方もおられました。

これに対してクラミジア尿道炎のときは、“尿道がかゆいです。”“なんとも言えん位、股間が気持ち悪い。”といわれて受診される患者さんが多いですが、以前に“尿道になにか物が入っている”と言われてびっくりしたことがありました。

訴える症状は様々でも検査所見は正直でこれらの区別はだいたい検尿検査でついてしまいます。淋病のときはかなり強い膿尿(おしっこに白血球がでる)があり、倍率を上げることで原因となる淋菌を顕微鏡で確認することができます。クラミジアのときは軽い膿尿がほとんどです。但し、淋病の時にはクラミジアが混合感染している可能性がありますのでいずれにしても尿にクラミジアが入っていないか調べる検査が必要です。

治療は、いずれも抗生物質を内服することで治癒します。ただ使う抗生物質が違うため注意が必要です。また、両者が混合感染しているときはそれぞれの抗生物質を連続して使わねばなりません。しかし、これらの病気はご本人だけでなくパートナーの方の治療も必要になってきますので、なぜ必要なのか、治療をしないとどうなるのかを十分に理解し治療を受けていただく必要があります。

第4回 「血尿について」

健康診断や人間ドック、内科の検査などで血尿といわれたことはありませんか?血尿と言われた方のほとんどは無症候性血尿(症状が血尿以外ないもの)で、体には影響しない血尿ですが、中には怖い病気が隠れていることがあります。このように、放っておいても良い血尿と病的な血尿を区別する必要があります。これらを区別するために当クリニックでは血尿を指摘された方に次の4つの検査を行っております。

  1. 検尿(出して頂いた尿を遠心機にかけ血尿の有無、程度を調べます。)
  2. 尿細胞診検査(出して頂いた尿中に癌細胞がないか調べます。)
  3. 超音波検査(腎臓に結石、腫瘍がないか、腎臓が腫れてないか調べます。)
  4. 排泄性腎盂造影検査(造影剤を注射し、尿になって出てくるところをレントゲン写真にして、腫瘍や結石の陰影がないか調べます。)

以上の検査で問題なければ、3-6ヶ月毎に検尿検査を行い、血尿の程度がひどくならないか経過観察します。ここがポイントで、何か異常があっても小さな病変のため最初の検査では見つからなくて、時間が経過し病変が大きくなることで初めて見つかることがあるからです。また、いつも血尿と言われているとか昔から異常のない血尿と言われているとしても新しい病気が出てくることがあります。これらは定期的に検尿することで血尿の程度が強くなっているのか、変わらないのかを調べることで新しい病変を早く見つけることができます。

血尿を呈する代表的な病気

尿路結石:腎臓、尿管や膀胱に石ができ痛みに伴い血尿が出ます。

尿路腫瘍:腎臓、尿管、膀胱や尿道に腫瘍(癌)ができ何の症状もなく血尿だけ出ます。

尿路感染症:腎臓、膀胱や尿道に細菌感染がおき痛みや発熱を伴って血尿が出ます。腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎などです。

糸球体腎炎:腎臓の尿を作る糸球体と呼ばれるところに炎症が生じた状態で、検尿で蛋白尿や白血球円柱などが血尿に伴って見られます。

特発性腎出血:何の兆候もなく血尿になります。検査しても原因は不明で、膀胱鏡をして左右どちらかの尿管から血尿が出てくるのが見えることがあります。

前立腺炎:男性の方で突然コーヒー色または、きれいな赤色の血尿が何回か続き、また元のきれいな尿に戻ります。尿路腫瘍との鑑別が重要になります。

第3回 「男性更年期障害について」

今回は、男性更年期障害という新しい病気のことについてお話したいと思います。

更年期障害って女性の病気ではないですか?とよく聞かれます。確かに女性の更年期障害は良く知られた病気で閉経による女性ホルモンの分泌低下により引き起こされるイライラ、抑うつ、全身倦怠感をはじめとするさまざまな症状を呈する状態です。男性には閉経というものがないので更年期障害はないと長い間考えられてきました。ところが近年、男性も精巣から出る男性ホルモンが加齢により少しずつ減少しそのことで様々な症状が現れることがわかってきました。男性の場合は、その下がり方が緩やかなので症状が出ない方が多いだけなのです。症状は人により様々ですが、

精神症状として 抑うつ、いらいら、不安、意欲低下、睡眠障害などの症状
身体症状として 突然の発汗、のぼせ、肩の張り、持続力低下、自律神経失調などの症状
性機能障害として 性欲の低下、勃起障害、持続力低下

が起こります。

この病気の難しいところは、症状が“うつ”と非常に似ていることです。現実には男性更年期障害外来を受診される患者様の7割から8割の方が“うつ”であり男性更年期障害ではないと診断されているという結果が出ています。

男性ホルモンは日内変動をしており午前8-10時ごろに一番分泌が高まります。そのため診断には朝一番の男性ホルモン(テストステロン)の量を測る必要があり、男性更年期障害の国際学会は317ng/ml以下を男性更年期障害の疑いありとしています。また、男性更年期障害であるかまたその重症度を判定する問診表も存在しますが、私どもではこれをあまり重用しません。もともと欧米人向けに作られたものであり、この問診表を用いると日本人の中年以降の方はほとんど男性更年期障害の範疇に入ってしまうからです。(かくいう私も立派な男性更年期と診断されてしまいます。)現在、泌尿器科の専門委員会で日本でのガイドラインが作成中ですので近い将来その問診表を用いて診断を行うことになるでしょう。

当クリニックでは、男性ホルモンの分泌量、SDS問診表における精神症状の重症度の評価、IIEF5問診表による男性機能の評価をチェックし治療方針を患者様と相談の後、決定しております。

治療方法は、カウンセリング、漢方薬による治療、男性ホルモンの補充療法、勃起不全に対する治療などアプローチの方法も様々です。検査結果にもよりますが、即効性のある男性ホルモン補充療法をしたい、漢方薬を試してみたい、勃起障害だけ直したい、患者様の希望やゴールは様々です。画一的な治療よりオーダーメイド的な治療が良いのではないかと我々は考えております。

第2回 「頻尿の原因」

今回は、頻尿をきたす病気を少しずつ解説していきたいと思います。

以前私の外来に、尿の回数が多いです、と受診された方がおられました。いろいろ検査をしても特に異常を認めなかったため、排尿チャートをつけていただきました。これは、一日の飲水量と排尿量を記録してもらうものですが、驚くほど水分を摂取されておられ、そのせいで排尿量も多いという結果でした。よくお話をお聞きすると内科の先生から血液がさらさらになるようにといって水分摂取を指導されておられたのです。お医者さんの指導を守られる良い患者様でしたが、結果的に多飲多尿が原因の頻尿で水分摂取を少し控えていただくことで頻尿は改善しました。同じ多飲多尿による頻尿でも糖尿病が隠れている場合がありますので一律な扱いはできません。この場合にはしっかりと糖尿病をコントロールする必要があります。

最近特にクローズアップされてきた病気としては、過活動膀胱というものがあります。定義は、1日の排尿回数が8回以上でそのうち週に1回以上は切迫感を伴うというものです。もちろん、このような症状を持つ方すべてに治療が必要なわけではありませんが、日常生活が妨げられるような頻尿には投薬などの治療が必要になります。脳梗塞をわずらった患者様で退院後から急に一日10回以上の頻尿になり排尿に間に合わなくなって下着を汚してしまうと訴えられる方がおられました。また、女性で水仕事をしたり水の音を聞いただけでおしっこを催しそれが気になって家から出られなくなった患者様もおられました。この方々は、抗コリン剤と呼ばれるお薬で症状が改善され普通の日常生活を送ることができるようになりました。

60歳以上の男性の方の頻尿 (特に夜間の頻尿) は、前立腺肥大を疑います。前立腺は膀胱のすぐ下にある若い頃はくるみ大の臓器で本来は精液を作る仕事をしています。前立腺は加齢により徐々に大きくなって、大きくなる人は夏みかんくらいの大きさになることもあります。ちょうど真ん中を尿道が貫いているため前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され尿の勢いが落ちたり排尿しようと思ってもすぐにおしっこが出なくなったりします。また、下から膀胱を押し上げるため膀胱が刺激され頻尿や残尿感という症状が出てきます。これらの症状にはアルファブロッカーと呼ばれるお薬が非常に良く効きます。
また、糖尿病をお持ちの方、骨盤(子宮や直腸)の手術をされた方は特に膀胱の周りの神経がダメージを受けており、そのために正常に膀胱を収縮できない場合があります。その結果、膀胱内に尿が残ってしまい(残尿といいます)、常に尿意を感じ頻尿になってしまう場合があります。この場合、残尿を減らすことが最優先で薬の内服や自己導尿といってご自分で細い管を使って尿を採って頂くという方法をとります。

尿管結石が膀胱に落ちる寸前、つまり膀胱の壁にかかったとき、やはり頻尿の症状が出ることがあります。但しこの場合、その前から腹痛、腰痛や血尿を伴っていることが多く容易に診断ができ痛み止めなどで対処できます。

膀胱炎でもやはり頻尿を強く訴えられることがあります。この場合、排尿時痛や残尿感も伴いますし、検尿検査で膿尿も認められます。 通常は血尿が症状のことが多いのですが、まれに膀胱癌で頻尿の症状が最初に出る場合があります。しかしおしっこをよく調べるとわずかに血液が混じっていたり、悪性細胞が尿中に検出されたりします。
前立腺癌でも頻尿を症状とし受診される方がおられます。直腸診やPSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる血液検査で発見されます。

以上良性疾患から悪性疾患まで頻尿を起こす病気は様々でおかしいなと思ったら、ためらわず泌尿器科で一度調べてもらうことが一番の近道です。

第1回 「頻尿について」

ホームページを開設してはや4ヶ月が経ちました。
今までメールや患者様から質問のあった泌尿器にかかわる様々な病気について、 少しづつホームページで解説していこうと思います。
第一回は頻尿についてです。 皆さんはおしっこが近いと感じたことはありませんか?
試験の前や徒競走の前などに無性にトイレに行きたくなったことがありませんか?
医学的には1日8回以上排尿することを頻尿といいます。 頻尿といっても原因は様々で放置してよいものから早急に治療が必要なものまで千差万別です。
よく年をとったから仕方がないとか泌尿器科でどんな検査をされるかわからないので怖いとか言われることがあります。 われわれにとっては日常的な検査、診察だと思っていても患者様にとってみれば1回1回が初めてのことなので心配になられるのですね。
まず言えることは、年をとったから仕方がない頻尿はないということです。
日常生活で困ってなければもちろん治療は要りませんが、夜中の頻尿のため日中ボーとする、 おしっこのことが心配でバス旅行に行けない、おしっこのことが気になって外出もできない というような頻尿は治療の必要があると思います。
治療することでバス旅行にも映画にも行けるようになれば生活の質が向上するからです。
また、泌尿器科って怖い検査をするところじゃないかという心配には診察をどのように 進めていくのか知っていただくことが必要かなと痛感しています。


私どものクリニックでは頻尿で受診された患者様に次のように診察しています。

  1. ) 検尿: おしっこをコップに出していただきます。膀胱炎など尿の感染がないか確かめます。
  2. ) 問診: 頻尿のタイプ、程度、内服されているお薬、手術歴などをお聞きします。
  3. ) 診察: おなかや手足を診せていただき頻尿を起こすような所見がないか調べます。
          また高齢男性の場合、直腸診で前立腺の大きさ、硬さを調べさせていただくこともあります。
  4. ) 超音波検査: 排尿後、膀胱内に残尿がないか腹部から超音波で調べます。 この診察によりある程度の診断をつけ、治療をスタートすることができます。

次回は頻尿の原因と治療について解説していこうと思います。